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伊豆大島・まっしろなブログ

伊豆大島に本社をつくり、地域おこしの会社をやっています。ぜひ伊豆大島へ!

日本の市場にイノベーションは通用しない。『リ・インベンション』

社会 書籍 ビジネス

ここ最近になって経済成長もそれなりに実感が出てきて(いるようで。)、企業の方も、やれ「設備投資だ」「イノベーションだ」と騒いでいるような感じですが、三品和弘さんの『リ・インベンション』という本に、「未だにイノベーションを求めているようではダメだよね。日本は。」的なことが書いてあったので少し紹介したいと思います。

イノベーションは今の日本では付加価値を生み出せない

製品の性能は向上して、消費者は豊かになった。でも、肝心の企業は利益を上げていない。その原因は「イノベーションを求めていることにある。」という意見を裏付けるケースを2つピックアップします。

しっかり市場を見なさい

一つ目の例は太陽電池。第一次石油ショック以後、日本は太陽電池の研究で世界のトップを走っていました。太陽のエネルギーを電気に変える変換効率は、当時、アメリカの6%を40%に引き上げるなど、その成果はすばらしかった。でも、それは世界から見れば大きな意味をなさなかったのです。

日本企業は変換効率というパラメーターに固執してきたが、それは太陽電池の設置場所を個人住宅の屋根の上と想定してきたからだ。ところが、欧州の国々が固定価格買取制度の導入に踏み切ると、広大な遊休地に太陽電池を大量に設置する電力会社を相手にする市場が主戦場になった。…(中略)…変換効率を上げる日本の技術は評価されない事態に陥ってしまった。

これこそまさに「木を見て森を見ず」。変換効率という「数値」だけをひたすら追い続けていた代償に、市場の枠組みが変わった瞬間、日本はその土俵からいとも簡単に振り落されてしまいました。

泥沼のデジカメ性能戦争

コンパクトデジタルカメラは、1995年にカシオが25万画素の製品を発売してからものすごい勢いで開発競争が始まり、現在では画素数のアップのみならず、手ぶれ補正や自動顔認識などの様々な機能が搭載されています。
でも、これだけ機能が大幅に向上した一方で価格に目を向けてみると、1999年に4万5000円だった平均単価が2011年には1万円を下回っている「こんなのむなしすぎるよね。」と。

これだけ一生懸命に開発を続けて利益が出なけりゃ…そりゃあもう……粉飾決算もやりたくなるでしょう。冗談です。

もちろん、全ての製品にイノベーションが無意味と言っているわけではなくて、三品さんはイノベーションが効果を発揮しない製品を

ライフサイクル上の成熟期や衰退期に入ったもの

としています。そして、このセグメントに入った製品は普及率も高く、購入経験のある買い替え層が市場を形成する。この層は、本当にありがたみを感じる機能や性能だけを最小限の出費で得ようとすると述べています。

「インテグリティー」の重要性

じゃあ、成熟期や衰退期に入った製品に関してはどのような施策をすればよいかというと、書籍のタイトルでもある「リ・インベンション」。言葉通りに受け取れば「再・発明」とでもなりましょう。本書では発明ではなく「改訂」という意味合いで使っています。
具体的には、「誰に、何を、どのように?」このどれかを大きく変えて、これまでの製品の評価基準とお別れすることです。分かりづらいですね。

なぜ分かりづらいかというと、評価の基準を

  • 数値に求めていない

つまるところの「インテグリティー」。「製品の隅から隅まで理想が貫かれた状態」です。
「インテグリティーが貫かれた商品であれば消費者はそれを本気と判断して、購入に踏み切る。」
これを満たした製品の例として、アップルの「アイパッド」や、ダイソンの羽根のない扇風機「エアマルチプライヤー」などの例が挙げられています。

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終わりに

仮にもJALは稲盛さんが就任した後に、組織体制の変更や路線・部門ごとの会計システムの構築やコストカットなどよって再上場を果たしました。ここでは、直接お金という「数値」を改善すること業績が回復していったわけです。この、いわば「強引」な手法による経営が良いか悪いかはいったん置いておいて、同じ「数値」でも、製品の機能に関わる数値を追うことは、結局は他社との競争に巻き込まれて疲弊してしまう。

おそらく、この本を大企業に勤めている研究者の人が見たら、怒りがふつふつと沸いてくるか、あるいは今の自分にむなしくなってくるかのどちらかになるのではないかと思います。
でも、この本は、アジアの国々、これからは特に南アジア諸国が続々と力を強めてくるぞ、という段階で、「じゃあ日本はこれからどういう道に進めはいいの?」という点で大きな指針を示してくれています。

最後に…「モノづくりニッポン」とかあぁだこうだ言われていますが、

「実は欧米に一歩も二歩も先を行かれているんじゃないか」

この本を読む限り、そう感じてしまいました。