伊豆大島の目指す場所、それと、はちみつ。
伊豆大島の「地域おこし」2期目が終了
東京都の120㎞南、伊豆諸島は伊豆大島に本社を持つウチの会社(株式会社イタドリ)は2期目が終了し、3期目に突入しようとしています。
主に伊豆大島の『地域おこし』を行う会社です。
初めてこの場所に降り立ったのが2014年2月、会社を設立したのが5月1日。
そこから2年弱が経過しています。
当時23歳。大島でのヒアリングでも、行く先々で「まだ早い」、「実際に住んでアルバイトでもしてから考えるべきだ」などと言われながらも、抑えきれぬ気持ちが押し切る形で
ちっぽけな、そして、島で唯一「ベンチャー」と銘打つ、ちっぽけな会社ができました。
設立までの細かい経緯はたくさんの方々に記事にしていただいているので省略します。下記の記事がおそらく一番詳細に書いてくださっているかと思います。
東京でもほとんどの人に反対され、当時全力で背中を押してくれたのは前職オーシャナイズの社長だけでした。親は泣いて反対しました。
会社を建てる時というのはほとんどの方が成功するイメージを多分に持っていると思うのですが、僕は「1年も持たずに失敗するんだろうなぁ〜」、「失敗しても笑い話になるからいいか!」と、マイナスなイメージを持っていました。そして、その予想とは裏腹に2期目が終了しようとしています。
「若者・バカ者・よそ者」
ただ、その過程は思っていた以上にストレスフルなものでした。「若者・バカ者・よそ者」が活動するというのはこれほどまでに大変なのかと感じましたし、今でも感じています。
度重なる嫌がらせや裏切り、営業妨害……。正直、この2年間に何度も会社をたたもうと思いました。怖くて大島に行けなくなったこともありました。僕が島のために何かを提案して実行しても、それを「善し」と思わない人はたくさんいます。島の方々が喜ばないことをやり続けるのは自己満足でしかない。僕自身が目指しているのは何か目に見える数字ではなく、島に住む方々の心の安寧なので、そのあたりの葛藤がありました。
自分の怠慢だと言ってしまえばそれまでなのですが、どうしても時間の制約がありました。ベンチャーでマンパワーの制約があるので地域とのコミュニケーションが十分に取れない。大島を外に発信するという目的があるために本島の会社とのやり取りが多くなるというのに加え、資本の維持のため同じく取引先は本島の会社がほとんど。生活の中心も都心です。
これはこれで良いのですが、「あまり自分の意見を声を大にして言わない方が良い」という忠告もたくさんの方から受けていて確かにそうだと思っていたので、できるだけ意見を発信することは控えていました。
一方で、下記にも書いている通り大島に残された猶予はそれほど長くはないため、外部にPRもしていかなければいけません。
会社の維持と大島の発展ということを念頭に置いた上で、自分の持っている時間のどのくらいを島で過ごすか、どれほど意見を発信したりメディアに露出するか。これらの微妙なジャッジ。薄氷を踏む思いでした。
結果は、まだ分かりません。
しかし、この1年は多くの人に「伊豆大島が盛り上がっているね」と言われることが多くなりました。海士町や小豆島などのビックネームには及びませんが、活性化に向かうムーブメントは起こり始めていると信じています。そして、そのうちのごくごく一部を自分が担えているのだとも思っています。
『イタドリ』という社名は、「土砂災害で多くを失った大島という土地に新たな芽を息吹かせる」という意味で付けたものなので、この目的は2年間でわずかながら果たせたのではないかと感じています。
とても長い道のりでした。
島を消滅させず、ずっと維持させたい
国や東京都に多くの財源を依存するこの場所で四方を海に囲まれた"島"というコミュニティーを維持していくためには、NPOでも、その他ボランティアでもなく、どうしても株式会社という枠組みで活動していきたい。そして、この気持ちが今でも変わらず僕を動かしています。
最新の国政調査で人口が約7700人となった大島。そして、さらには驚くことに毎年人口比で約1%の減少となっています。このままでは町の維持のためのインフラが数十年後には機能しなくなってしまうでしょう。
人口構成や財政構造が他自治体に比べ危険な水準にあることは、データ(東京都大島支庁「管内概要」)を見ても明らかです。
観光を主要産業としている大島にとって2020年の東京オリンピックは間違いなく追い風です。多少の事情と政治的な力学の関係上、都心に比べて観光客の増加率は少し鈍くなると予想してはいますが、それでも年間数万人単位の増加の可能性はあります。
ただ、問題はその後です。単年での減少となった日本全体の人口に加え、2020年からは東京都の法人税の減収も推計されています。
東京都の管轄下である大島が多くを外部に依存せず今後も単独の自治体としての形を維持していけるかどうかは、2020年までのアクションがほぼ全てを決めると言っても過言ではないでしょう。
現状、そのハードルは極めて高いです。10年前であればもう少し打てる手も多かったのかなとも思います。
ただ、そうも言っていられません。
僕がやりたいことを言うと、多くの人に
「君がやるべきことではない」
「自分の首を絞めるだけだと思う」
「それは会社ではなくて行政がやるべきことだ」
と言われますが、もちろんそれを承知で会社を運営しているし、うちの会社は存続さえしていれば外部経済垂れ流しで良いと割り切っています。
経営者としては適切でないのかもしれないですが、自社にとってあまりメリットがなくても、大島全体の発展に寄与する意思決定を優先しています。
会社を大きくするのは大変なことだし、そのつもりもありません。
それに、このスタンスの方がやりがいがあります。
はちみつを中心とした伊豆大島ブランドを作ります。
それでです。
- 何か大島全体に大きなインパクトを与えることをしたい。
- 島に新たな産業を作り、将来的に大きな雇用を生みたい。
- 1次産業から3次産業までを連動させながら同時並行で発展させたい。
- 自社で目に見える商材(モノ)を作りたい。
- 個人的にパソコンが好きではないので、アナログな事業がしたい。
……ということで、やりたいことの1つめとして、昨年の8月から今年の12月までの17ヶ月間を目処として新規事業開発を行っています。今がざっと折り返し地点です。2017年から販売できるようになります。
別途堅苦しい事業名もあるのですが、多くの人には「はちみつ事業」と伝えています。
とはいえ、それだけではなく多岐に渡ります。
数ヶ月前になりますが、一般社団法人日本はちみつマイスター協会様が主催する「第1回ハニー・オブ・ザ・イヤー」にて少し紹介していただきました。
コンテスト終了後、日本はちみつマイスター協会理事の山口正人氏は、「養蜂が産業として成り立っていけば、その地域の環境保全だけでなく、雇用も生まれます。私たちはこれから、伊豆大島で採れたハチミツで特産品を作るプロジェクトを始めるのですが、皆さんもハチミツを好きになることで、その地域をより豊かにできる可能性がある事に気付いてください」と話した。
概要は下記のパッケージです。
- はちみつを作ります。
- 大島の既存の特産品とはちみつを組み合わせた新しい商品を作ります。
- ギフトパッケージを開発します。
- 「伊豆大島ブランド」を立ち上げます。
- EC機能を持ったブランドページを立ち上げます。
1:はちみつを作ります。
養蜂をします。自分でもまだ信じられません。
専門家3名に調査に来ていただいた結果、大島には養蜂に適した花がたくさんあることと農薬を使用していない場所が多くあることから、養蜂のGOサインが出ました。飼育方法に関しても追加の専門家への依頼済みで、来島・指導を仰ぎます。
ただ、自社の養蜂は大きくはせず、ゆくゆくは島の多くの方に養蜂に参加して欲しいと思っています。島には活用されていない土地がたくさんあるので、そこで養蜂をしてもらって蜜が取れたらイタドリに卸してもらうという流れができれば、遊休資産の活用・新たな雇用の創出につながります。
2:大島の既存の特産品とはちみつを組み合わせた新しい商品を作ります。
具体的には、ふりかけ・ドレッシング・乳酸菌カップスイーツの開発を東京や福島、広島の会社さんなどと進めています。
あまり知られていないところですが、大島の特産品の一部は東日本大震災が起きてから地理的なリスク等を理由に販売額が大幅に減少しています。
はちみつだけではなくこういったものを組み合わせた商品を製造・販売することで、原材料としての消費に加えて既存の特産品のPRにもつなげたいと考えています。
3:ギフトパッケージを開発します。
僕がベンチャーの世界に足を踏み入れるきっかけになったのが「ソウエクスペリエンス」という会社との出会いで、その影響が大きいです。
ギフトを贈ることで大島のストーリーが伝播する。想いが伝わる。
大島には現状しっかりとしたギフトのバリエーションがないので、作ったら需要があると思うし、みんな友達に大島のことを紹介したくなると思うんです。
百貨店などに向けた通常ラインでは高齢者や高所得者にアピールできるし、ライトなバリエーションを作ればソーシャルギフトなどで若者にもターゲティング可能だと思います。
そして、このギフトを媒介に大島に実際に行ってみようと思う人を増やし、観光客の獲得を目指します。
4:「伊豆大島ブランド」を立ち上げます。
これまでに確立していなかった大島ブランドを立ち上げます。行政にも反対されなかったので、民間の会社ではありますが作ります。
個々に商品が乱立しているとバイヤーも商品を選定しづらいし、統一ブランドの方が消費者にも訴求がしやすいです。付加価値も付けられる可能性だってあります。
既存の商品の内の一定割合を伊豆大島ブランドでパッケージングしてもらえるような流れが作れれば良いと思っています。
5:EC機能を持ったブランドページを立ち上げます。
自社で製造する商品だけではなく、既存の商品も売っていこうと思っています。
大島では島内の商品を一括で管理・販売する場がありません。これに関しては単純にロットや在庫管理の事情を考えた際にやる人が現れなかったというだけだと思うので、それであればウチが担えればと思っています。
「伊豆大島ブランド」としてのラインの商品を増やしていくことでサイト上でも相乗効果が生まれ、かつ実店舗からの注文も多く見込めるようになるかもしれません。
このサイト上では商品の販売だけでなく、観光と連携した施策を打っていきたいと思っています。
・とにかく、やってみるのみです。
全く結果が出ない可能性だってあるかもしれません。
ただ、僕はこの「はちみつ事業」が大島の活性化につながると本気で思っています。
ワクワクしますしね!
3期目はこんな感じで、はちみつに注力したいと思っています。