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「英語」ができて「仕事」ができる人材を求めるのは会社のエゴ

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英語ができても「仕事」はできない

今朝のGunosyでトップにオススメされていた記事にこんなものがありました。

大研究 なぜ日本の企業はこんな採用をしているのか ユニクロ・楽天・グーグルほか 急増中!「英語ができて、仕事ができない」若手社員たち
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35580

内容はタイトルから分かるように、「入社後に使いもしない英語を評価基準に採用をしても、結局英語が出来ても仕事ができない若手社員が増えるだけだよ。」というものなのですが、その中に少々気になる一節がありました。

しかし、『グローバル企業』に憧れて入社した新人のなかには、日本の企業文化がわかっていない者が多い。たとえば私の部署のイギリス生まれイギリス育ちの女子社員。当然、英語もペラペラですが、自己主張が強すぎる。彼女の仕事は広告営業。広告を載せてもらうのが仕事ですから、取引先の接待やご機嫌伺いも必要になる。そういった場に、英語はいらない。むしろ日本特有の遠慮や謙遜が必要ですが、彼女には一切それができない。飲み会でも会議でも、ずっと自分の意見を述べ続けている。当然、煙たがられますよ」

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35580?page=2

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彼女はすこし極端な例なのかもしれませんが、この記事中では一貫して、「英語ができる人は日本企業の文化に従うのが苦手だ」というエピソードを挙げています。
でも、本当は、そんな文句を会社側が言う権利なんてないんじゃないかと思うんです。

英語脳と日本文化

人間のDNAに一つとして同じものはありません。つまり、脳の仕組み、意思決定の傾向は人それぞれです。それは男女によっても人種によっても違う。
ここで大事なのは、「脳の働きは、行動や文化によって変わりうる」ということです。ロンドンのタクシー運転手は、市内の複雑な道を覚える必要があるために脳の一部が大きく発達しているというのは、よく知られているケースです。

そして、今回フォーカスしたいのは「言語」について。『脳科学がビジネスを変える―ニューロ・イノベーションへの挑戦』では、英語に関してこのようなことを述べています。

最近、英語を会社の公用語にする企業があるが、言語が変わると考え方が変わる可能性があることに注意すべきだ。文化が変わると脳も変わる。その違いを上手にビジネスに活用することが大切である。

この中で挙げられている例として香港チャイニーズ(英語と中国語のバイリンガル)についてのものがあり、何かについて彼らにアンケートを受けてもらうとして、その結果は、英語で質問を作るのと中国語で質問を作るのでは答えが異なる場合があるというのです。
つまり、別に「自己主張が強い」のが「アメリカン(今回の例だとブリティッシュですが)」とか「取引先の接待やご機嫌伺いができない」のが「アメリカン」だとかを言うつもりはありませんが、会社の公用語を英語に変えることで、脳の働きが無意識の内に「英語化」してしまうかもしれないわけで、これまで日本語をベースにして形作られた日本の企業文化とは違った文化がてきてくる可能性があると思うんです。
だから、会社として英語を公用語にするのは「これまでの日本の企業文化から決別する意志がある」という風にとらえるのがしかるべきであって、そこで「日本の企業文化に慣れろ、理解せよ」と言うのは経営者のエゴなんじゃないかと思います。外向きには「わが社はグローバルな企業を目指し、そのためにグローバルな人材を育成します」なんて言って、内向きには「上司に逆らうな」「規則」がああだこうだ……。「良いとこ取り」はそんなに簡単にできるものではないと思います。
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「英語公用化で海外進出」の疑問

さらに、もっとおかしいんじゃないかなということでユニクロを例に取りたいと思います。一時期に比べると多少売り上げが伸び悩んでいるユニクロですが、社内の英語公用化や海外進出、さらには店長候補の社員の「世界同一賃金」など、かなり大胆な施策を打ち続けています。
この中の「海外進出」。海外の店舗のスタッフリーダはいったん日本で研修した後に、現地の店舗運営を任されます。つまり、海外の社員は「日本式」に行動をコントロールされているわけです。接客に関して言えば、例えば「両手で品物を渡す」なんていうのは全世界でかなりウケがいいなど、今のところはそれなりにいい滑り出しをしているという評価が多くあります。
でも、よく考えると、これはかなり危険な賭けをしているようにも思えます。日本の社員には英語を公用語として「米国化」を促し、海外の店舗には日本式の接客をマニュアル化して「日本化」を促す。「社内英語化で海外進出!」と言えば筋が通っていてカッコイイかもしれませんが、お互いにもたらしているものは相反している可能性があるわけです。「脳」の働きから考えると、今の段階ではお互いに自分の頭で考えていることと実際に求められていることには明らかな違いがあって、かなり体にストレスがかかっていることになります。

成果主義が日本人に合わなかった理由

同書では、日本が導入した仕組みで、脳が原因でミスマッチを起こしているものとして雇用制度を取り上げています。

日本人は欧米人に比べて不安傾向型の遺伝子を持っている人が多い。昔の日本の人事制度や組織の仕組みは、ある意味では不安要素を取り除き、人が前向きに仕事に向かえるようにする環境作りをしていたといえる。欧州流の人事制度を模倣しても、その仕組みが日本人の脳の動きと合致していなければ失敗するだろう。

終身雇用制・年功序列の賃金制度は、「まぁ、それなりにやっていれば解雇もされないし給料も上がっていく」ということで安心して仕事に取り組めた。でも成果主義だと、日本人にしてみれば「もし結果が出なければどうしよう」と、仕事に消極的になり、判断力も鈍るかもしれないわけです。

もちろん、ユニクロの日本の社員にとって、これまで馴染んできた企業文化に(奇跡的に)英語がマッチして、さらには海外の店舗の社員に(これまた)奇跡的に日本式の業務がマッチして、これまで以上に業績がアップするかもしれません。でも、それ以上にユニクロはリスクの高い選択をしているとも思っています。

これからユニクロの業績が上昇するのか、下降するのか、とっても気になるところです。


そして、本当に会社で英語が必要なのか、これが最も疑問です。